『杉並区議選ドラフト会議』をふりかえって
- 杉並区議選から早くも1ヶ月、既に新しい杉並区議会も始動しております。
- 選挙時に当杉並区議選ドラフト会議を閲覧していただいた皆さま、改めてありがとうございました。
- その後も全国から多くの有意義なご意見をいただいておりますが、このあたりで『杉並区議選ドラフト会議』をふりかえり、ひとつ区切りをつけておこうと思います。
- そもそもの始まりは、杉並区選挙管理委員会が、区民を募って委員会までつくって企画したボートマッチを断念したことでした。一昨年の衆院選以来、大きな変化を続けている杉並区で、その変化がさらに良い方向につながるのではないかと期待し、関心を持つ区民が少なくない中、行政サイドが、低迷し続ける投票率をなんとかしたいと、区議選の啓発活動のひとつとしてボートマッチを企画したというニュースは、選挙管理委員会の心意気を感じるものであっただけに、その突然の撤回と断念はとても残念であると同時に不可解なことでもありました。
- そこで、たまたまそのニュースを聞いた数人が、行政のボートマッチがつぶされたんなら、市民で勝手にやれば面白いんじゃない?と盛り上がったのが出発点でした。
- ボートマッチは、海外ではかなり一般化している国もあるようですが、妥当なものを設計するには、候補者についてのそれなりのデータ量が必要となります。海外では、候補者がそれぞれ詳細なマニフェストを公表していることが、重要な要素になっているという話も聞きました。
- 私たちが実際に動き始めたのは、2月末でしたから、なにしろ時間がありません。限られた条件の中、何が出来るのか探りながら進めましたが、いわゆるボートマッチを形にするには時間も技術も資金も足りませんでした。
- その試行錯誤と消去法の結果できあがった『杉並区議選ドラフト会議』の形式は、実はとてもシンプルなものです。
- 候補者の基本的な属性とYes、Noで答えられる簡単なアンケートの結果を、データベースとして検索出来るというだけのものです。イメージしたのは楽天市場のようなショッピングサイト、スニーカーを買うのに、サイズをチェックして、色をチェックして、デザインを選んで…というふうに商品を絞り込んでいく感じ。
- サイトが始動した頃、「特定の候補者に誘導しているのではないか?」 「偏りが無いのなら、アルゴリズムを示せ」などのご意見もありましたが、アルゴリズムなんて難しいものは無く、政党名をチェックすれば、そこに属する候補者が並び、ある問題に賛成をチェックすると、賛成した候補者が抽出されるというだけのシンプルなデータベースにすぎません。
- おぼろげながら、「多すぎる候補者の中から自分に合った人を探すサイト」≒ボートマッチに近いものを作るつもりでしたが、アンケートを集計し、データを入力して、実際に動き出したサイトを触ってみると、このサイトは結局、多すぎる候補者のそれぞれの特徴を確認し、気になった人の詳細を調べることができるけれど、それを選ぶのは閲覧者本人で、その助けをしているに過ぎないということが分かりました。言ってしまえば、投票前に配られる選挙公報のデジタル版に近いのかもしれません。
- おかげさまで、「分かりやすい」「うちの選挙区でもぜひ欲しい」などのご意見を多数いただきましたが、ひょっとするとこのサイトは全ての選挙で行政側が作るべきものなんじゃないかというふうにも思いました。特に地方議会では候補者に興味を持っても、それぞれを調べるのに手間がかかりすぎます。選挙公報も全ての有権者に届くわけではありませんし、結局、選挙当日に掲示板のポスターを見て決めるという方が多いのでは無いでしょうか。そして多くの有権者が投票所にたどり着く以前に意欲を失っているのではないか… 選挙が告示された時点で、このようなサイトがあれば、通勤電車の中でさっき駅前で挨拶していた候補者を調べてみたり出来ます。
- アンケートの質問が偏っているというご意見もいただきました。
- 質問項目については、出来るだけ偏りの無いものを検討したつもりですが、今改めて再考しても、全く偏りの無いものというのはかなり難しいのではないかと思います。いっそのこと、それこそ選挙公報に候補者が載せている内容をそのままデータベース化するという方法もあるかもしれませんが、それだけになると候補者が言いたい事のみになってしまい、有権者が聞きたいこと(ひょっとしたら候補者が聞いて欲しく無いこと)には触れないことになってしまうかもしれません。
- このあたりはこれからも検討の余地があると思われます。
- ただ、今回の『杉並区議選ドラフト会議』について言えば、閲覧者が興味の無い質問はチェックせずに、ただ並んだ写真を見て興味を持った人の詳細を見てみるだけでも良いのです。70人近くの候補者がいる選挙で、それぞれの候補者のホームページにすぐ飛べるというだけでも、有権者の役にたったのではないかと考えます。
- また、「杉並区議選ドラフト会議」のようなサイトを作ってみたいという方がいらっしゃれば、今回のノウハウはお伝えしたいと考えておりますので、ぜひご連絡いただきたいと思っております。行政がやるべき部分も多いと書きましたが、市民が独自に企画する意味も大きいと思います。ぜひあなたの街の『ドラフト会議』をつくってみてください。